光合成によって炭素化合物を自ら生産する生物種である植物は、低分子炭素化合物を中心とする多様な生理活性化合物を進化させ、自らの成長や環境適応の制御に活用してきたと考えられます。これらの植物生理活性化合物の知見は、基礎科学研究への貢献のみならず、農産物の生産に役立つ植物生長調節剤の開発や緑の革命に代表される農業展開など、応用科学研究にも活用されてきています。
 近年になり、このような研究の発展形として、化学の力によって生物の未解明な領域を明らかにするケミカルバイオロジー(化学生物学)という学術分野が立ち上がり、植物科学の世界においても適用が試みられつつあります。

 私たちは、このケミカルバイオロジー研究と、20世紀の後半に興り21世紀になって更に隆興する分子細胞生物学とを融合した研究展開を行うことによって、植物の成長機構の謎を解き明かしたいと考えています。特に、天然・合成ケミカルおよびケミカルに関連する新規遺伝子の探索と機能解明を手掛かりに、植物成長は細胞分裂・分化・伸長の制御と光合成の制御の両輪によって支えられているとの観点に立つことによって、植物成長の仕組みを統合的に理解することを目指しています。
 これらの知見は、地球温暖化、環境破壊、食糧不足、など人類の直面する諸問題の解決に役に立つと期待しています。

進行中の研究プロジェクト