モンゴル・ゴビ砂漠で植物調査を行いました

私たちの研究室の研究テーマのひとつに発芽後初期成長の速さに着目してモンゴル草原植物の中から選抜してきたChloris virgataの生理機能などの解析研究があります。Chloris virgataは迅速成長性と環境ストレス耐性を併せ持つ稀有な植物であることが判ってきましたが、分子生物学レベルの遺伝子解析情報に乏しい植物であることから、私たちは理化学研究所CSRSとの共同研究によって次世代シークエンサーによるChloris virgataの全発現遺伝子の同定と発現プロファイル解析、さらにそれらの中から植物の成長促進や環境ストレス耐性向上に関わる有用遺伝子の探索研究を、研究室の一部のメンバーによって進めています。

このChloris virgataを始めとするモンゴル草原植物の夏期のゴビ砂漠における生態・形態・生理機能などの総合的な解析を目的とする植物調査を、モンゴル国立大バトフー教授との共同研究によって行いました。調査は、JICA/JSTのSATREPS事業「遊牧民伝承に基づくモンゴル草原植物資源の有効活用による草地回復プロジェクト」の支援受けて行われました。研究室からは、中野と小川裕稜くん(修士課程)が参加した調査の一部を紹介します。


             ランドクルーザー2台でゴビ最南部へ。

         ゴビ最南部にあるChloris virgataの群落を2022年以来、2回目の再訪

            乾燥してひび割れた大地に芽吹くChlorisと照度/温度計
            (111800Lux, 43.8°C!)

            ゴビのChlorisは短い草丈で種子を形成する傾向がある

          東の草原地帯でもChloris群落を発見

       降水量が豊富で気温も適度な東の草原エリアのChlorisは草丈も長い

(Chloris以外のゴビの植物) 乾燥地で頻繁に見かけるCaragana。黄色い花と金色に見える茎も目を惹く、マメ科の多年草。

(Chloris以外のゴビの植物) ChlorisCaraganaの共生。パイオニアプラントと私たちのプロジェクトで位置付けるChlorisが乾燥地帯に先に定着し、Chlorisに守られた小草地の中にCaraganaが定着した?

(Chloris以外のゴビの植物) ゴビでは根本に砂が吹き溜まり小山を形成している形での生態で非常に度々観察されるNitraria。この砂溜まりには、続く植物が定着する形も観察される。

(Chloris以外のゴビの植物) 相当な乾燥地に生育する姿で観察されるOxytropis。単体で他の植物から離れて生育する姿が目立つマメ科植物。ゴビで遠くからでも良く目立つPopulus diversifolia(トーロイ)の大樹とさらにその先の地平線を背景に高台に育つ孤高の姿は、小さいけれど力強い。