モンゴル草原由来のストレス耐性と成長迅速性を兼ね備えたパイオニア植物Chloris virgataから、RNAseq解析によって乾燥ストレス耐性遺伝子を探索したナムーナさん(博士課程学生)を第一著者とするモンゴル国立大、理研などとの共同研究論文が、BMC Plant Biology誌に掲載されました
モンゴル草原の南にはゴビ砂漠が広がっています。このゴビ砂漠エリアは、極めて少ない降水量と、昼夜/夏冬の寒暖差も極めて大きい、非常に過酷な環境に晒されています。このような環境においては、強い環境ストレス耐性を持つ、もしくはそのような耐性を導き得る遺伝子変異を得た新しく得たような植物が、優先的に生き残って来ているだろうと考え、ゴビ砂漠で生育する植物種の探索と生理機能解析を進めてきました。
中野らは2022年5月, 2025年7月に、モンゴル草原からゴビ砂漠エリアの植物調査を行い、ゴビ砂漠の植物や昆虫、鳥類も見かけられないような無生物地帯の最辺部に、他の植物種に先駆けて無生物地帯に接するかのようにChloris virgataの生育コロニーが存在することを発見しました。このような無生物地帯を切り拓くように育つ植物は、パイオニアプラントとも呼ばれますが、Chloris virgataは正にゴビ砂漠におけるパイオニアプラントとして砂漠の進行を食い止めていたのです。

研究室では、Chloris virgataの乾燥ストレス耐性の解析を行い、イネやコムギと比較して極めて強い乾燥ストレス耐性を持つことを明らかとしました。(図2)

このChloris virgataにおいて乾燥ストレスシグナルが強く発動するタイミングを遺伝子解析によって確認し、乾燥処理3時間、6時間後のChloris virgataのRNAseq解析を行い、約21000種類の新規遺伝子を同定しました。さらにこれらの内、特に発現誘導性が高い遺伝子の探索を行い、3種遺伝子が、実験植物アラビドプシスに強い乾燥ストレス耐性を付与する機能を持つ、新規な遺伝子であることを明らかとしました。これらの新しく発見した遺伝子を、Mongolian Grassland plant Drought stress resistant gene 1,2,3 (MGD1,2,3)と命名しました。(図3)

見つかった遺伝子群は、ストレス環境に強い植物の作出を目指す未来の分子農業、植物バイオテクノロジー分野において貢献することが期待されます。
これらの研究は、京都大学中野研、モンゴル国立大、理研、東大との共同研究によって行われ、この度、BMC Plant Biology誌に掲載されました。
Namuunaa, G., Baldorj Bujin, B., Ayumi Yamagami, A., Bolortuya, B., Kawabata, S., Ogawa, H., Kanatani, A., Shimizu, M., Minami, A., Mochida, K., Miyakawa, T., Bekh-Ochir Davaapurev, B., Asami, T., Javzan Batkhuu, J., Nakano, T.
Identification and functional analyses of drought stress resistance genes by transcriptomics of the Mongolian grassland plant Chloris virgata.
BMC Plant Biology, 25 Article Number:44 (2025)
dDOI: 10.1186/s12870-025-06046-3